【OSAKA STYLING EXPO 2016 JOINT COLLECTIONグランプリレポート】

これからのファッション業界を担い、挑戦し続けるOSE参加者。 サン・メンズウエア株式会社さま

レディースショーで頂点に立ったのは、 ‘メンズ’を名とする会社だった。

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年一回、アパレルメーカーが集う大阪スタイリングエキスポの会場で行われた、レディースファッションショー『ジョイントコレクション』。そこに、ランウェイを見つめるサン・メンズウエア株式会社の矢野郁子社長の姿があった。その表情には笑顔と涙が入りまじり、苦労を乗り越えてきたこれまでの歩みと長年の想いが凝縮されているようだった。
この日を迎えるきっかけになったのは、サン・メンズウエアの展示会。大阪スタイリングエキスポの関係者が訪れ、トータルコーディネートされたマネキンを見て、「このブランドでファッションショーに参加をしませんか?」と話を持ち掛けたのが始まり。そのときも、矢野社長は涙を浮かべた。遠い夢だと思っていた「自社のブランドでファッションショー」、その日が現実となって近づこうとしていたからだ。

服づくり未経験のまま、急きょ社長へ。

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入社時から「自社のレディースブランドを手掛け、ファッションショーに出演したい」と心にあったが、サン・メンズウエアでは、自社ブランドの他にも量販店向け商品やライセンスによるキャラクター商品など、幅広く展開している。自社ブランドを含め、モノづくりにはこだわりを持っていたものの、ファッションショーは、頭では一握りのブランドだけが立つ舞台だと思っていたとのこと。しかし、関係者にはそのこだわりがしっかりと伝わっていた。
サン・メンズウエアのモノづくりのこだわり自体は、先代の父親から受け継がれている。父親は流行への敏感なアンテナを持っていたが、決して独りよがりな商品づくりはせず、自分の主張よりも着る側が何を求めているかを大事にしていた。そんなこだわりを持つ父親の姿を見て、矢野社長は「父のようになれるだろうか?」と感じ取り、アパレルの道を避け、最初は証券会社に就職した。そのあとサン・メンズウエアに入社しても、服づくりに直接かかわる経営や制作ではなく、事務や営業の道へ。しかし、転機は突然訪れる。父親が倒れ、なんの心の準備もないまま会社の全指揮を任されることになったのだった。

作り手の自信は、着る人の自信になる。

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社長と言っても、部下は自分よりも経験も知識も年齢も上の人ばかり。父親に相談することもできないという悲しみに、一人でいるときは涙し、悩む日々も多かった。それでも、仕事場では笑顔は絶やさないと決めていた。着た人の気持ちを高めてくれる服、だからこそ作る自分たちが笑顔でいなくちゃという想いがあったからだ。
「どうすればお客様に喜んでもらえる商品をつくれるか」。ヒントを求め、矢野社長は父親の言動を思い返した。そして、『着る人の意見を大切にすること』にたどり着く。アパレルに携わる父親がいて、幼い頃から服が好きだった矢野社長にとって、着る人の目線は誰にも負けない強みだった。いつも顧客目線を大切にし、そのこだわりはスタッフ達にも根付き、サン・メンズウエアのスタンスともなっている。たとえば、レディース商品がサンプル商品であがってくると、スタッフ達はもっと可愛く細く見せられないかと試行錯誤。「もっと丈が短い方が」「ラインをもう少し細く」といった数ミリ単位の細部での意見が飛び交い、自分達が本当に着たいかで商品づくりをしているという。素材にもこだわり、新しい素材の情報を察知すると、自社にも取り入れられないかと皆で模索。消費者目線を大切にしながらも、「プロとして自信のあるものしか世に出したくない。作り手の自信はきっと着る人の自信にもつながるはず」と考えているからだ。こだわりは、ファッションショー当日にも見え隠れしていた。モデルを前にして、もう少し綺麗に見せられないかと夢の舞台開始直前までスタイリングに奮闘。その姿には、自社ブランドをよく見せたい!というより、着てくれているひと(モデル)の気持ちを高めてあげたい、自信を持ってほしいという想いが強く込められていた。

夢を噛みしめていたら、最後にサプライズが。

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『自社のレディースブランドで、ファッションショーに出演する』という入社当初から内に秘めていた夢。先代の頃からサン・メンズウエアは「消費者が日常で着たいかどうか」で商品づくりをしており、矢野社長も父親の意思を受け継いで普段の生活で着たいと思わせる服、リアルクローズを大切にしていた。だからこそ、“夢”は“遠い夢”と思っていたようだ。しかし、そのこだわりが夢を近づけたのだった。
モデルの立ち振る舞い、スポットライト……本格的なショーが自社のブランドを綺麗に演出。そして、多くの人に見てもらえている――その様子を前に、矢野社長は夢の瞬間を満喫していた。イベントでは、ブランドターゲットの30~40代以外からも「着たい!」「育児で離れていたが、またオシャレをしようと思った」などの嬉しい感想が相次いだ。サン・メンズウエアが目指すリアルクローズ、着る人目線のこだわりの商品づくりは、消費者にもしっかりと伝わっていたのだった。結果、多くの消費者の心を掴み、グランプリを獲得することができた。発表の瞬間、横にいた社員からは矢野社長へ言葉が飛んだ、「いままでで最高の笑顔をしていますね」と。

叶った夢の続きに、さらなる喜びが広がっていた。

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イベントは夢を叶えられただけではなく、今までの商品づくりにさらに自信が持てるようになり、社員たちのモチベーションにもつながっているという。たとえば、営業でも自信をもって取引先にプレゼンできるようになった。また、グランプリ時の話を切り出すと食いつきもよく、商談の場は盛り上り受注も増えているという。さらに小売店にも、グランプリは販促しやすい訴求ポイントだと喜んでもらえているとのこと。「メンズウエアという名前なのに、レディースも扱っているんだね」と言われることも多くなったみたいだが、それは顧客からの直接の問い合わせが増えている証拠でもある。数字的にも手ごたえを感じているようで、自社ブランドを発信するいい機会になったという。メンズという名がつき、実はレディースブランドでも素晴らしい商品をつくっていることを周知されていなかったサン・メンズウエア。ジョイントコレクションが開かれる大阪スタイリングエキスポは、そんな隠れた良品をつくるメーカーの新たな一歩を踏み出すきっかけになった。
「服は着た人を幸せにできるものだと再確認できました。服の持っている可能性を信じて、業界全体でもっと盛り上げて頑張っていきたいと強く思えるようになりました」とファッション業界を担う一員として夢を語ってくれた矢野社長。インタビューを行なった部屋には、先代が書いた企業理念の額が飾ってあり、「お客様を想った商品づくりをしなさい」という教えとともに、「夢を持ちなさい、夢や目標が人を成長させるのです」という言葉があった。

矢野 郁子Ikuko Yano
サン・メンズウエア株式会社代表取締役。証券会社、サン・メンズウエア(株)の営業、事務を経て、2003年より現職に。自社ブランドには「COLLINS’ SUTUDIO」などがあり、顧客目線の商品づくりをモットーにしている。ジョイントコレクションで見事グランプリを獲得。将来、自社ブランドの店舗展開を目指している。
≪大阪スタイリングエキスポ≫
大阪のライフスタイル産業の活性化を目的に年一回開催。学生や新進企業の発掘、ファッションショーや一般消費者を巻き込んだイベントを行い、大阪のモノづくりの魅力を府内外へ広く発信する場となっている。

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